オーソトロピクス バイオブロック治療
近ごろ、いかにもそれらしく見せながら違うメカニクス・フィロソフィーの“なんちゃってバイオブロック”装置やその写真を目にするようになってきた。
Indicator lineを改善する意義も知らずに、このバイオブロック装置を使いこなすなどできない。
まして、なんとなく歯列拡大するだけの“なんちゃって”矯正治療では、わたくしたちの求める姿勢と顔貌の改善なぞ、夢物語となってしまう。原因を詳しく分析して装置の設計は正しくし、しっかりと使うことが大切である。
オーソトロピクスは顔面成長を正常化するための考え方・哲学でJohn Mewによる造語である。そしてバイオブロックはJohn Mewによる不正咬合治療に用いる装置のシステムである。
多くの臨床医が理解しにくいのは、バイオブロックStage 1 を一般的な歯列拡大装置としてとらえているからであろう。そのため理解し易くするため例をあげて、以下に示す。

比較的よく見られる例として上顎歯列が狭い場合を取り上げると、私たち東アジアの多くの患者は横に広い歯列弓を持っているのは周知のことである。頭蓋は前後に短い短頭型で顎骨もまた前後に短く、前方狭窄の不正咬合状態になりやすい状態にある。つまり、V字状の歯列や前歯部のつぶれたような乱ぐいの歯列形態を示すようになる。
また、元々日本人の筋緊張は比較的良好であったにも係わらず、1980年代から姿勢の悪い子どもが目立つようになりだし、同時期に不正咬合の子ども達も増え始めるようになってきた。最近は口元が緩んだり逆に異常緊張を呈して、締め付けや舌低位、舌の引き込みが見られるなど筋機能的な課題が明らかとなり、「口腔機能発達不全症」が提唱されるようになった。これらの変化や機能不全というモノが、別々にあるわけではないことをしっかりと関連付けて覚えてほしい。
これは下顎の引き込みと猫背、頭位後屈により、後方で噛んでいるかのように見せつつも、前方への成長発育不足となって上顎が下方や後下方に下がる要因となる。笑顔が苦手であったり会話中に低舌位で、白人に比べ舌が口蓋に接触しないことにも関連している。
近年のPSPやDSブーム、ゲーム機器の普及もこれに拍車をかけている。
下顎過成長のⅢ級不正咬合が多いと言われていた日本人において、今や中顔面がのっぺりとした顔立ちで上顎が低発育で後退落下し、見た目もひょろ長い顔立ちの上顎前突や過蓋咬合の子ども達が増えだしている理由となる。
顎骨の前後長径を計測してそれで十分な大きさがあるとか、歯が並ぶ分だけ少し広がればいいとか言った論議とは全く別の観点に基づく育成誘導法なのである。
Shelfを有するバイオブロックstage1装置を使い、セミラピッド拡大で10mm 拡大すると~装置を正しく使ってくれれば~年齢に関係なく縫合は開大し、頬骨支持や他の顔面縫合からの相反圧で、上顎骨は1~2mm 前方に押される。この作用は6歳前が最良であるが、8歳まで効果的で、それ以降は数ミリでも困難になるので前方牽引装置を使用すると良い。
しかしながら、縫合はバイオブロック装置によるセミラピッド拡大で、ほとんどの年齢で拡大する。上顎第1大臼歯間の幅径は女子で42mm、男子で44mm 以下にならないことが重要で、ワイドなアジア人の舌房を確保するのに必要である。
McNamara やProffitは38mm であれば充分と示唆しているが、原始時代の調理をしていない頃の摂食時は52mm 前後と広かった。John Mewが常に言うことだが、「拡大は顔を改善し、オーソトロピクスが他の治療よりも優れている」由縁である。
拡大してすぐの頃はたやすく戻ってしまうので、骨が安定するまで保持しておくことが賢明である。
Stage1装置は単なる床拡大装置ではない。上顎骨を動かすためのPostured Applianceであるので、その使い方を誤らないようお願いしたい。
(改訂:2022.10.31)